体外受精に失敗して悩んでいる人のための【縁ガーデン】
体外受精に失敗して悩んでいる人のための【縁ガーデン】 » 不妊治療に関するコラム » 体外受精を行うと卵巣がんになりやすい?

体外受精によって卵巣がんのリスクが高まるという話を聞いたことがある方もいるかもしれません。実際のところ、体外受精によって卵巣がんの発症リスクはどのように変化するのでしょうか?具体的なデータが気になる方も多いことでしょう。

この記事では、体外受精と卵巣がんの関係性について解説し、あわせてスクリーニング検査の重要性についてもご紹介します。体外受精と卵巣がんの因果関係について正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。

体外受精が卵巣がんにつながる有意なデータはない

過去には、体外受精を受けることで卵巣がんの発症リスクがやや上昇するという報告が、海外で発表されたことがあります。その報告では、排卵誘発剤の使用が卵巣がんの発症に影響を与えている可能性が示唆されました。

しかしながら、これらのデータは具体性に欠け、偶然の影響が大きいとされており、統計的に有意とはいえない内容でした。したがって、現時点では体外受精による卵巣がんリスクの増加について、過度に心配する必要はないと考えられています。

また、不妊の原因として知られる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症も、卵巣がんのリスク因子として挙げられています。特に子宮内膜症は、子宮内膜が卵巣などの子宮以外の場所にできる疾患であり、発がんリスクが高まると考えられています。

『Human Reproduction』誌に掲載された論文では、1994年から2015年にかけてデンマークで集計されたデータをもとに、体外受精を受けた女性と受けていない女性を約9~10年にわたり追跡調査しました。その結果は以下のとおりです。

卵巣がんを発症する絶対的なリスクは0.06%と非常に低い

この結果から、排卵誘発そのものが卵巣がんのリスクを高めるのではなく、子宮内膜症という既存のリスク因子に注意が必要であると考えられます。子宮内膜症をお持ちの方は、定期的に医師の診察を受け、超音波検査などで状態を確認することが大切です。

参照元:医療法人オーク会公式サイトhttps://www.oakclinic-group.com/blog/2020/02/22/taguchi01-22/

卵巣がんは遺伝や出産経験の有無も影響

卵巣がんの罹患率は40代から増加し、60代でピークを迎えるとされています。原因についてはまだ完全には解明されていませんが、要因の一つとして「遺伝」が挙げられており、全体の約1割が遺伝的要因によるものとされています。

特に、遺伝性のがんが家系にある方や、がんを発症した家族がいる方は注意が必要です。

また、月経不順や月経前症候群など月経に関するトラブルが多い場合も、卵巣機能の低下によってリスクが高まるといわれています。

その他、初潮が12歳以下と早かった方は、通常よりも排卵回数が多くなるため、卵巣がんのリスクが高くなるとされています。さらに、妊娠・出産を経験していない方や、30歳以降に初めて妊娠した方も、体内のエストロゲン分泌が多い状態が続くことで、卵巣がんのリスク因子となります。

欧米では卵巣がんの発症率が高く、これは食生活による脂肪摂取量の多さや、肥満体型との関連も指摘されています。

参照元:六本木レディースクリニック公式サイトhttps://www.sbc-ladies.com/column/taigaijyusei/1383.html

無症状のことが多いため、検査はとても大切

卵巣がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないことが多く、気づかないうちに進行するケースも少なくありません。腫瘍が大きくなってくると、腹部や骨盤の痛み、腹部の張り感、食欲不振、小食、頻尿などの症状が現れるようになります。

卵巣がんは悪性度が高いため、早期発見・早期治療が何よりも重要です。早期発見のためには、「スクリーニング検査」を受けることが推奨されます。

体外受精の治療中には、腫瘍マーカーを測定する血液検査や、内診、経膣的超音波検査などが行われるため、治療過程において卵巣がんを早期に発見できる可能性もあります。

まとめ

体外受精と卵巣がんの関係について、海外の研究結果では、明確な因果関係を示す有意なデータは見つかっていません。したがって、体外受精による卵巣がんリスクについて、過度に不安になる必要はないとされています。

ただし、卵巣がんのリスク要因には、遺伝や出産未経験のほか、多嚢胞性卵巣症候群や子宮内膜症といった不妊に関連する疾患も含まれます。これらのリスクを持つ方は、注意深く自身の体調を観察し、必要に応じて検査を受けることが重要です。

卵巣がんは進行が早く、悪性度が高いがんであるため、少しでも気になる症状がある方や、スクリーニングに関して不明な点がある方は、早めに医師に相談するようにしましょう。

参照元:日本産婦人科学会「卵巣腫瘍」https://www.jsog.or.jp/citizen/5715/
参照元:日本産科婦人科学会Q&Ahttps://www.jaog.or.jp/qa/mature/jyosei191211/
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